【北海道白糠町】後継者不在、60年続く伝統を東京のよそ者が救う!?「大森水産」の未来とは

~ふるさと納税返礼品として「本ししゃも」の配送を開始!~
北海道白糠町(しらぬかちょう)には“どこを探してもここにしかない”そんな声が届く逸品があります。その一つが大森水産の「本ししゃも」。伝統製法を守り、手作業で丁寧に加工される「本ししゃも」は、濃厚な旨みが特長。一口食べれば、今まで口にしてきたものとの違いをはっきりと感じます。2024年1月より、ふるさと納税返礼品として、今シーズンの「本ししゃも」の全国への配送を開始しました。 白糠町note: https://note.com/_shiranukacho/ ふるさと納税サイト:https://furunavi.jp/product_detail.aspx?pid=1100746

創業から60年を超え、長年地元でも愛され続けてきた「大森水産」のこの味に、今新たな風が吹いています。

「廃業」という危機を乗り越え、株式会社イミュー(https://www.immue.co.jp/)へと事業承継を決めた大森水産の社長、大森照子さんにお話を聞きました。

大森照子さん大森照子さん

創業60年の歴史に幕を閉じる

2023年8月に主人の逝去後、私を中心に家族経営で操業を続けましたが、高齢化に加え後継者も不在であったため、「廃業」という苦渋の決断を下したのです。町の人たちからは惜しいという言葉を沢山かけていただきました。明かりが消えた工場を見つめ、肩を落とすお客さんもいて、申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、その時は他に手が見つからなかったのです。

大森水産の「本ししゃも」は、ふるさと納税の返礼品としても出品していたので、日本中にファンがいるという商品でした。そういうこともあり、白糠町役場からも「なんとか続けられませんか?」という言葉をいただいていました。そして紹介いただいたのが、イミューさんでした。イミューさんは、東京の会社でありながら、白糠町に「イミュー白糠工場」という、極寒ブリの加工工場も建設し、地元の産品開発やブランディングに熱心に取り組んでいる会社です。白糠町にしっかりと根を張って活動されていることを知り、何度も会って会話をするうちに、この人たちになら大森水産がこれまで守ってきた伝統を託せるのでは、と感じたのです。(大森さん)

新たな道へのスタート

イミューさんが大森水産の事業を継ぐことに決まったときは、本当にうれしかった。でも、一番喜んでいるのはお父さんだと思います。仕事していてもウロウロしているように感じるのよ。お客さんも、死んだ社長がニコニコ笑ってお店にいる気がするって言ってくれて。

イミューの従業員の皆さんには大森水産の工場に入っていただき、実践で技術を覚えてもらっています。活気が戻った大森水産をみて、常連のお客さんも喜んでくれています。

私自身も廃業後は、何をするにもやる気が出なかったのですが、最近は周りから、「なんだか元気になったんじゃない?」と声を掛けられます。そりゃそうよ、またししゃも始めたから!と返しています。

一方で、伝統の技術やノウハウを渡していくことの重みや難しさ、責任感も感じています。

前の味と違うね、と言われるのは許されない。60年守り続けたその味を大事にして、しっかりと次の世代に継いでいきたいと思っています。(大森さん)

イミューの皆さんには、私は厳しいからねって先に言っているんです。箱を開けた瞬間から、おいしそうだなと思ってもらえるよう、キレイな仕事をしないといけない。パートさんもみんなが経営者だと思ってほしいと指導しています。教えるのは難しいですが、味は絶対に変えない。しっかりと伝えていきたいと思っています。(大森さん)

伝統を受け継ぐイミューの決意

大森水産からの事業承継を決めた、イミューの代表取締役社長・黒田康平さんと、技術面の継承・習得の責任者でもある副社長・田中友康さんに話を聞きました。

左 イミュー代表取締役社長 黒田康平さん、中央 大森照子さん、右 イミュー株式会社副社長 田中友康さん左 イミュー代表取締役社長 黒田康平さん、中央 大森照子さん、右 イミュー株式会社副社長 田中友康さん

白糠町に来るようになって、初めて「本ししゃも」を食べた際、その食感と旨味の強さに大きな衝撃を受けました。自分がこれまで食べていたものとは、全く別物と言って良いほどです。そして知ったのですが、僕たち東京の者が、普段ししゃもとして食べているのは、「キャペリン」という輸入魚ということでした。(黒田さん)

写真:一般に「ししゃも」と呼ばれる「樺太ししゃも」「キャペリン」写真:一般に「ししゃも」と呼ばれる「樺太ししゃも」「キャペリン」

写真:大森水産の「本ししゃも」サイズ感に違いがあるのは、オスとメスが交互に刺さっているため。 「本ししゃも」は、オスとメスともにおいしく味わうことができる。写真:大森水産の「本ししゃも」サイズ感に違いがあるのは、オスとメスが交互に刺さっているため。 「本ししゃも」は、オスとメスともにおいしく味わうことができる。

一方で、「本ししゃも」とは北海道の太平洋沿岸にのみ生息している日本固有種。毎年11月頃に産卵のため白糠町を流れる茶路川(ちゃろがわ)と庶路川(しょろがわ)へ遡上します。白糠沖へたどり着く頃には油がほどよく抜け、オスは身がキュッと締まりメスの卵が成熟期を迎えるため、白糠町の名産品となっているのです。(黒田さん)

また、この「本ししゃも」を、よりおいしくするのが大森水産の伝統製法である「手振り塩」。一般的には塩水に漬けて味付けすることが多いししゃもの工法を、あえて手のかかる「手振り塩」にする理由は、やはり味の違い。フワッと柔らかくふくよかな身の食感に、口いっぱいに広がる濃厚な旨み。臭みは一切なく、ふんわりと甘みが余韻として残ります。

このこだわりを知って、大森水産のことがさらに好きになりました。(田中さん)

この「手振り塩」こそ、伝統継承の重要なポイントとなります。大きな釜の中に「本ししゃも」をランダムに入れ、手で塩を振ってリズムよく混ぜ合わせるのですが、単純作業のようでありながら、塩の分量の見極めや、傷つけないよう塩を行きわたらせるための混ぜ方など、経験や感覚が不可欠です。大森水産では、この「手振り塩」はたった1人だけにしか許されない作業であり、今までは大森さんご家族の中だけに伝わるものでした。

また、「本ししゃも」の漁期は毎年10月~11月半ばと非常に短く、この短い中でも特においしい時期の見極めも重要です。買い付けたあとに「手振り塩」を行い、一晩寝かして、翌日塩を落とすために水洗い。串に刺して再度振り洗いして、乾燥させる…。取得しなければならない技術は数多くあります。(田中さん)

大森さんからはすごく丁寧に教えていただけるので、どの作業も楽しく覚えられたのですが、自分の中で得意なことと苦手なことがあるのに気づきました。手振り塩作業は得意で、大森さんから筋が良いと褒めていただいたのですが、ししゃもを干していく作業の中で、色んなところに手が引っかかってしまって…。なんてことのない作業に思えるのですが、大森さんの方が3倍も早いんです。(田中さん)

田中さんは、やらせてください、教えてくださいと自ら志願するので、教え甲斐があるんです。そして、そんなに意欲がある人もあんまりいない。息子でもなければ孫でもないけれど、いい人に巡り会えてよかったな~って思います(大森さん)

“ここにしかない伝統の味”に新たな風を吹き込む

大森水産から事業承継した「本ししゃも」を、これからどう育てていくのか。第一に、品質や味、そして伝統を引き継いでいくのは絶対。その一方で、「本ししゃも」にさらなる価値があると感じていただけるよう、見せ方やブランディングなど、私たちの力が発揮できるところだと思っています。伝統と革新じゃないですけど、味と品物は変えずに、見せ方や伝え方をもっと変えていく努力をし続けていきたいと思います。(田中さん)

田中と大森水産にいて驚いたのは、普通に1日3人くらいお客さんが買いに来るんです。廃業しているのにですよ?そういうのを見て、僕たちもとても大変なものを受け入れてしまったのでは?と思ったこともありました。でも、大森水産の「本ししゃも」が、北海道みやげの定番になれるところまでいったら、夢としてもとてもいいですよね。

“どこを探してもここにしかない”と言わしめる白糠町自慢の味を “変えない努力”と、“新たな価値”に向けて、これからも走り続けたいと思います。(黒田さん)

■北海道・白糠町のご紹介

北海道・白糠町は北海道の東部に位置する人口約7,200人の町です。

豊かな自然に恵まれ漁業、林業、酪農などが盛んです。太平洋沖の暖流と寒流が交わる絶好の漁場にあり、1年を通じて様々な海産物が獲れますが、茶路川、庶路川、音別川と鮭が産卵に帰ってくる川が3本もある恵まれた立地から「秋鮭」「いくら」の漁獲量が高く、ふるさと納税の返礼品としても高い人気を誇っています。近年は「ブリ」の漁獲量が増え、「極寒ブリ™」として新たな名産品の一つになっています。

白糠町ホームページ: https://www.town.shiranuka.lg.jp/

■株式会社イミュー

大森水産からの事業承継を受けました。

https://www.immue.co.jp/

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